キミを奪いたい
貧血の薬を貰い、バスに乗るためにまっすぐ正面玄関へと向かう。
──と、その時だった。
電話のバイブ音と肩を叩かれたのがほぼ同時で。
バイブ音よりも肩を叩かれたことの方が気になった私は、すぐに振り返って誰かを確認した。
「こんにちは。リョウの友達だよね?」
「あ……」
肩を叩いたのは、この前中庭でぶつかった女性。
リョウにとても似てるから、ハッキリと覚えている。
「こ、こんにちは」
「突然話しかけてごめんなさいね」
「いえ……あの、」
「あ、そう言えば自己紹介まだだったわね。改めまして、リョウの母です」
「えっ!?」
リョウのお母さん!?
よく似ているから血縁関係はあるかなと思っていたけど、十代後半の子供がいるようには見えなかったから、まさかお母さんだなんて思ってもいなかった。