キミを奪いたい
恥ずかしさと戸惑いでなっちゃんの顔が見れなくて、自然と視線が下がってしまう。
そんな私の気まずさを感じ取ってくれたのか、なっちゃんが気を使って喋りかけてきてくれた。
「あーちゃん、困らせてごめんね」
「そ、そんなこと……っ」
と言いつつ何も言えないのは、困ってると言ってるようなもの。
「……」
「……」
「……あーちゃんは、俺のことどう思ってる?」
なっちゃんのこと……?
「大事に思ってるよ」
それだけは悩まずに言える。
だって、なっちゃんは私にとって大切な大切な幼なじみだから。
「大事、か……」
複雑そうな顔で笑うなっちゃんを見て、望んでいた返事ではなかったんだということを悟る。
「……」
無言で俯いてしまったなっちゃん。
その横顔を見て、胸がぎゅうと痛いぐらい締めつけられた。
出来ることなら、なっちゃんの望む言葉を返してあげたい。
けど、今の私にはその言葉を返してあげることが出来ない。