キミを奪いたい
「大事だけど、付き合えない?」
「……っ」
すがるようなその瞳に、またしても言葉が詰まった。
「なっちゃ───」
「あーちゃんのことが好きだよ」
「っ」
───きっと、なっちゃんも分かってる。
分かってて言ってる。
私の中にはまだリョウがいるってこと。
リョウのことがまだ好きってこと。
なっちゃんは、気づいてる。
「あーちゃんに会いたかったから戻ってきたんだ」
───それなのに、なんでそんな哀しそうな顔でそんなこと言うの。
「俺を見てよ」
なんで、そんな泣きそうな顔で笑うの。
なんで……
「なっちゃん……」
「っ、ごめん、あーちゃんを困らせるつもりはなかったんだ。噂が出たんならって、気持ちが先走っちゃって……」
「……うん」
なっちゃん言いたいことは何となく分かる。
「でも、言ったことは後悔してない」
なっちゃんの力強い瞳にとらわれて、目が離せない。
「……あーちゃん。俺があーちゃんのこと好きってこと忘れないで」
「……うん」
────この日から、私の中でなっちゃんは“ただの幼なじみ”ではなくなった。