キミを奪いたい
「な、なっちゃん?」
微かに左頬に当たるなっちゃんの温もり。
完全に抱きしめられてるとは言えない微妙な距離にどうしたらいいのか分からなくて、とりあえず呼びかけてみる。
するとなっちゃんは、少しだけ体を離して私の顔を覗き込んできた。
「っ、」
吐息が触れそうなその距離に目の前が真っ暗になって、フラッシュバックが起きる。
“────あやの”
頭上から囁かれる心地良い低音ボイス。
切れ長の瞳が私を捕らえて。
腰に回された腕に力が込められれば、
それはリョウからのキスの合図。
待ちきれない私は、爪先立ちでリョウを欲する。
“リョウ……”
あとは、唇が触れ合うだけ────