キミを奪いたい
「っ、あーちゃん?」
動揺したその声に、ハッと我に返った。
すると、目と鼻の先になっちゃんの驚いた顔があって、
「……あ、ごめん……!」
瞬時に今の状況を察した私は、慌ててなっちゃんの胸元を押して離れた。
わ、私、今、なっちゃんのことリョウと勘違いしてキスしようとしてた……?
自分の仕出かしてしまったことが脳裏によみがえって、とたんに羞恥が襲ってくる。
チラッと視線を上げて様子を伺えば、口元を押さえながら照れくさそうに俯いているなっちゃんがいて。
その姿を見た瞬間、今すぐここから逃げ出したい衝動に駆られた。
けど、そんなこと出来ないって分かってるから、出来るだけ平然を装いながらなっちゃんに話しかける。
「み、みんな行っちゃったね。早く行こう」
「そ、そうだね」
私だけじゃなく、なっちゃんまで動揺してるもんだから余計に気まずくて。
とりあえず、ここにいても仕方ないから移動しようと思って歩き始めたら、なっちゃんの様子がおかしいことに気がついた。