キミを奪いたい
「……っ、はぁ……は……っ、」
リョウ────
こんな別れ方をするなんて思ってなかった。
こんな、モヤモヤしたまま別れるなんて……
「とりあえず帰らなきゃ……」
時計を見ると、すでに10時を回っていた。
これ以上遅くなるとまた誰かに絡まれるかもしれない。
ただでさえすぐ近くにZeusがいるんだ。
早くここから去らなきゃ。
「リョウ、ほんと何してんの。いくら電話しても出ないし。何かあったのかと思ってGPS使っちゃったじゃん」
「……」
「ちょっと!」
「……」
「ねぇ、さっきの子って───」
「ナギサ」
「っ」
心のどこかで大丈夫だって思ってた。
きっと暗闇で顔は見えていないだろうって。
見えたところでウィッグだって被ってるし、メガネだってかけている。
だから、きっと大丈夫。
そう安心していた。
「───誰よ、あの女」
まさか、あの場に雷神の元姫がいたなんて、
夢にも思ってなかった。