キミを奪いたい
────リョウが、婚約した……?
それを聞いた途端目の前が真っ暗になって、周囲の音さえも遮断されてしまう。
唯一分かるのは、リョウが婚約したということだけで。
それは、ショックという言葉じゃ片付けられないぐらい私の心に衝撃を与えた。
リョウが、婚約した……?
だれ、と……?
頭に浮かぶのは、BARで女の子たちと一緒にいるリョウの姿。
そして────
“アイツらから奪ってやりてぇ”
あの時の、リョウの言葉。
────婚約しているのに、なんであんなこと言ったの?
「ご褒美、喜んでくれたみたいだね」
俯いてしまった私をわざわざ下から覗き込んでくるナギサくんは、明らかにこの状況を愉しんでいる。
平静を装わなきゃと思えば思うほど真っ黒な感情が襲ってきて。
なんとかその感情押さえ込もうと、下唇を噛み締めて必死に耐えた。
だけど。
「リョウと婚約者、すっごくお似合いだよ。
────君よりずっと、ね」
その言葉にはどうしても耐えることが出来なかった。
「っ」
こぶしをグッと強く握りしめて、返事もせずにその場から駆け出す。