キミを奪いたい
リョウの行先であるリナの家までは、歩いて15分、車で3分の所にあった。
「また豪邸かよ」
珍しく黙って着いてきていた瑠衣は、再び現れた豪邸をうんざりした顔で見上げた。
規模的にはリョウの家よりも格下である嘉波(ヨシナミ)邸。
だが、派手好きの主の趣味のせいで至る所が豪華な造りになっていた。
その代表と言えるのが、あやのが見たあの滝と噴水だ。
「開けろ」
インターフォンを押すや否や、そう命令をしたリョウ。
当然驚く侑真たちだが、知り合いだからだろうと深くは考えなかった。
数秒もしない間に観音開きの門が開き、目を疑うほどの庭園が姿を現した。
「すっげー」
そう感嘆の声が洩れたのはその時だけで。
直後に現れた数人の黒スーツの男たちに思わず口を噤んだ。
けれど、リョウだけは表情を一切変えず、敷地内へと足を踏み入れた。