キミを奪いたい
侑真たちは顔を見合わせて頷いた後、揃って門をくぐっていく。
四人とも平静を装っていたが、内心では動揺していた。
本能的に感じ取っていたからだ。目の前にいる黒スーツの男たちが裏世界の人間だということを。
それは、カスミが出てきた時点で感じ取っていたけれど、嘉波邸の黒スーツの男たちを見て確信へと変わった。
「アンタたちはこれ以上通せねぇな」
「……は!?」
リョウのために真っ二つに道を開けた黒スーツの男たち。
当然自分たちも通れると思っていたから、行く手を阻まれて驚いた。
「通せよ!」
どんな相手かを知っていても侑真たちは引けなかった。
あやのを連れ戻すためなら裏世界の人間にでも噛み付いてやる。
彼らの瞳からはそんな強い意思が見て取れた。
だが、黒スーツの男たちも譲るわけにはいかなかった。主の命令は絶対だからだ。
「緋月。お前らはそこで待ってろ。すぐ連れて戻る」
両者の睨み合いを止めたのは、肩越しに振り返ったリョウだった。
「ちょっと待てよ! 俺らも────」
「テメェら、そいつらに手出すんじゃねぇぞ」
「っ、」
リョウは黒スーツの男たちに向けてそう言った後、瑠衣の制止をスルーして屋敷の中へと消えていった。
*客観的視点 END*