キミを奪いたい


その声に、ハッと我に返った。


すぐにリョウから手を離して、押し返す。


けれど、リョウは完全には離れてくれなかった。

私の肩を抱いたまま彼女の方へと振り返る。



「リョウ、」


リョウを呼んだはずなのに、彼女とリョウが目を合わせたのはほんの一瞬で。

すぐに鋭い眼光が私に向けられ、睨まれた。


その視線に耐えれなくて、何とかリョウかた離れようとするけれど、力を込めれば込めるほど肩を抱く力が強くなっていく。

非力な私にはそれに対抗出来るはずもなく、結局諦めるしかなかった。



とりあえず、彼女の視線から逃れようと俯いた時、



「今すぐ俺の前から消えろ」



頭上から、凍りつくような冷ややかな低音が放たれた。




……え? 今の、リョウの声、だよね……?



一瞬、誰の声が分からなかった。


別れた時や緋月と対峙した時でも、ここまで冷ややかな声ではなかったから余計に分からなかった。
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