キミを奪いたい
拉致されて数日経ったある日、
それは侑真が気分転換にとリンちゃんを倉庫に呼んでくれた時に起きた。
「ねぇねぇ、あやのちゃんもプロレスしよ~よ~」
「アホか。お前とあやのを一緒にすんな。技かけたら骨折するわ」
「何よ! あたしもあやのちゃんと同じ女の子なんですけど!」
「お前のどこが女だよ。あやのと比べたら月とスッポンだっつーの」
「ムキィッッー!!くっそー腹立つ!馬鹿煌!!」
「馬鹿はお前だ」
もはや、名物コーナーになりつつあるリンちゃんと煌さんのコントのようなやり取り。
鳳皇の皆さんの明るさは、私だけじゃなく緋月幹部にとっても救いになっていた。
正直、気まずかったから。
侑真たちは私に気を使っているし、私も侑真たちに気を使っている。
そんな私たちの気まずさをメンバーたちも気付かない訳がなくて。
結局、緋月全体が気まずい雰囲気になっていた。
だから、鳳皇の幹部たちが遊びに来てくれたおかげで今はすっかり元通りになっていて、倉庫内は活気に満ちている。
────ガラッ。
「……ん? 誰だ?」
その楽しい雰囲気をぶち壊したのは、
「……え? リョウ? 」
誰もが目を疑う人物だった。