キミを奪いたい


「あやの?」



早く顔を上げなきゃいけないって分かってる。
けど、自分がどんな顔をしているのか想像がついてなかなか顔を上げられない。



「あやの、どうした」



リョウ大きな手が私の両頬を優しく包み込む。

その手に促されて顔を上げれば、明らかに動揺しているリョウの顔が目に飛び込んできて。

そんな顔今まで見たことがなかったから、なぜかこっちの方が動揺してしまった。



「あの、リョウ、」

「なんだ」

「ううん、なんでもない」



これ以上踏み込めば、ナギサくんのことを言ってしまいそうで。

そんな陰口みたいな事したくないから、グッと堪えて気付かれないように笑顔を貼り付けた。


そして、気まずくならない内に話題を変える。



「……Zeus、解散しちゃうの?」



本当は、お母さんの事が聞きたかったけど、ガンだと知ってしまった以上、『お母さん大丈夫?』だなんて安易には聞けない。

だから、リョウから話してくれるまでは何も聞かないことにした。



「あぁ。あれは若頭になる為に作ったモンだからな」

「……そっか」


……そうだよね。その為に作ったチームだもんね。

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