キミを奪いたい
「お前と別れて一度は踏ん切りがついた。何度再会しても、もう戻れないんだと自分に言い聞かせた」
「……」
吐き捨てるようにそう言ったリョウを見て胸が苦しくなった。
何も、言えなかった。
「けど、お前がアイツと付き合ってるという噂を聞いて抑えられなくなった」
「っ」
「街でアイツとお前を見かけるたびイラついた」
「街で、見かけるたび……?」
いつ見られていたんだろう。全然気付かなかった。
「こんな風に、何度捕まえに行こうと思ったか分からねぇ」
口調を強めてそう言ったリョウが私の手首を握りしめる。けど、力は入ってなくて、ただ拘束しているだけ。
どちらかと言えば、私を見つめる視線のほうが痛かった。
「今思い出すだけでもムカつく」
まるで拗ねた子供のような口振りでそう言ったリョウに、思わずぽかんとしてしまった。
だって、こんなリョウ見たことなくて。
いつもクールなリョウがこんな顔をするなんて驚かない訳がない。