キミを奪いたい
「もうぜってぇ離してやんねぇ」
「……うん」
もう離さないで。
私も絶対リョウ傍から離れないから。
同じようにリョウの頬触れながらそう言えば、握られた手をクンと軽く引き寄せられた。
それによって縮まるリョウとの距離。
鼻先が触れそうなほどの至近距離に鼓動が跳ねるのは必然で。
その先を期待してしまう自分が少し恥ずかしかった。
けど今は、恥ずかしいなんて感情よりも、リョウに近付きたい感情の方が強いから。
「……チッ」
「……リョウ?」
数センチ先で何故かぴたりと止まったリョウ。
かと思ったら、小さく舌打ちをして離れていった。
キス、しないの……?
雰囲気的にキスするかと思ってたから、離れていって寂しい……というか、残念というか。
って、何言ってるんだろう私。
「してーけど我慢する。すんのは全て終わった後、本当にお前を手に入れてからだ」
「……へ?」
真顔でそんなの事を言うから、一瞬理解できなくて。もう一度脳内でその言葉を咀嚼して、ようやく理解する事が出来た。
と同時にふふっと笑みが零れる。