キミを奪いたい



「もうぜってぇ離してやんねぇ」

「……うん」



もう離さないで。

私も絶対リョウ傍から離れないから。



同じようにリョウの頬触れながらそう言えば、握られた手をクンと軽く引き寄せられた。

それによって縮まるリョウとの距離。


鼻先が触れそうなほどの至近距離に鼓動が跳ねるのは必然で。

その先を期待してしまう自分が少し恥ずかしかった。


けど今は、恥ずかしいなんて感情よりも、リョウに近付きたい感情の方が強いから。



「……チッ」

「……リョウ?」



数センチ先で何故かぴたりと止まったリョウ。

かと思ったら、小さく舌打ちをして離れていった。


キス、しないの……?


雰囲気的にキスするかと思ってたから、離れていって寂しい……というか、残念というか。


って、何言ってるんだろう私。




「してーけど我慢する。すんのは全て終わった後、本当にお前を手に入れてからだ」

「……へ?」



真顔でそんなの事を言うから、一瞬理解できなくて。もう一度脳内でその言葉を咀嚼して、ようやく理解する事が出来た。

と同時にふふっと笑みが零れる。

< 382 / 476 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop