キミを奪いたい
イライラしてバレたの?
「別れてイライラしてて、様子がおかしいと思ってた時にお前と病院で会っただろ。そん時ピンときたらしい」
「え」
あの時の私達の態度で?
結構よそよそしかったと思うんだけど……
「何か知らねぇけど勘良いんだよ」
あ~、女の勘……いや、母親の勘ってやつなのかな?
じゃあ、病院で話しかけてきてくれたのも、リョウに送って行ってって言ったのも、全部分かっててだったんだ。
「後押しされたのは繁華街で会った後だ」
「繁華街で会ったあと?」
いつのことだろう。
「久しぶりにした時」
「っ」
“した”なんて曖昧な言葉にせいで一瞬分からなかったけど、私の唇に親指を押し当てるという意味深な行動のおかげですぐに見当がついた。
「もう!」
加えて反対の手で首筋をなぞるという嫌がらせつきだからたまったもんじゃない。
忘れてるどころか細かいところまで覚えてるし!
「……あの日、お前とアイツが付き合ってないと知って決意した」
「決意?」
「若頭の地位を捨てる」
「……」
「……けど、数日は悩んだ」