キミを奪いたい


そんなの当たり前だよ。そんな簡単に捨てられるものじゃない。


今までの努力を全て捨てるなんてこと、そんな簡単に決められる訳がないよ。





「───決意した日から数日後、お袋の容態が悪化した」

「……え?」


容態が、悪化……?

じゃあ……今は?



「峠は越えたけど、いつどうなるか分からねぇ」

「そんな……」



前会った時はあんなにも元気だったのに……

ガンってこんなにも急に容態が悪くなるものなの……?



「もしかして、最近繁華街にいなかったのって……」

「あぁ。病院行ってた」



やっぱり……


まさか街から消えた理由がお母さんの看病だったなんて……



「それ以外にも組のことで色々動いてた」

「……そう、だったんだ……」



そんな大変な時なのに私の所に来てくれたんだと思うと胸が苦しくなる。


堪らなくなってそっとリョウの手を握りにいくと、すぐに握り返された。

手から伝わるリョウの温もりに、あんなにも苦しかった心が和らいでいく。

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