キミを奪いたい
「お前の顔が浮かんだ瞬間、決意した。
っていうより、迷いが消えた」
「……」
「お前がいない未来なんて考えらんねぇ」
「っ、」
その言葉を聞いた瞬間、言葉が出るよりも先に絡まった指を解いてリョウを力いっぱい抱きしめていた。
衝動だった。
ただ手を握っているだけじゃ足りなくて。
“嬉しい”なんて言葉じゃ伝えきれなくて。
体が勝手にリョウの元へと動いていた。
「……あやの?」
「……」
抱きしめた後も言葉なんて出てこなくて。
溢れる想いを心に留めたまま、リョウを抱きしめる力だけが強くなっていく。
そんな私をリョウは黙って受け止めてくれていて、少しの間、私たちは抱きしめ合ったまま時を過ごした。
「……ごめんね、痛くなった?」
沈黙を破ったのは、リョウではなく先に抱きしめた私で。
リョウの首から腕を解き、少しだけ距離を空けてリョウを見上げた。
私を見つめるリョウはいつもと変わらず無表情だけど目は穏やかで。
その瞳を見ただけで心がホッと温かくなる。