キミを奪いたい
リョウ……
“ それも迷いが消えた理由の一つだった”
そう言ったリョウの気持ちを考えるだけで哀しくなる。
誰だって、“最悪”のことなんて考えたくはない。自分の親の事なら尚更のこと。
それでも、それを考えてしまうほどお母さんの容態は悪化しているんだ。
リョウはお母さんの切実な想いを叶えようとして“選択”した。
自分の“幸せ”と、お母さんの“切実な想い”のために。
「あ、あやのちゃん!」
リョウと一緒に一階へと下りて行くと、私に気付いたリンちゃんが手を振って出迎えてくれた。
リンちゃんの周りには鳳皇メンバーがいて、その向こうには緋月メンバーが幹部たちと向き合って何か話している。
その横顔は少し険しくて、もしかして私とリョウの事で何か言い合ってるんじゃないのかって勘ぐってしまう。
「あやの」
足が止まってしまった私の肩を、リョウがそっと抱いてくれる。
「……」
それでもみんなの元へ行くことを躊躇っているのか、足は動いてくれなくて。
そうこうしている内に、メンバーたちの方が私たちに気付いた。
「っ、」
みんなと目が合って、分かりやすく動揺しまう私。顔が強張っていることは、自分でも何となく気付いていた。
────どうしよう。みんなに話しかけるのがこわい。