キミを奪いたい
────もう、頭の中が真っ白だった。
私は緋月の姫で、リョウはZeusのトップのトップで。
それがどういうことなのかすぐには理解出来なかった。
ううん、違う。
したくなかったんだ。
私たちが敵だなんて、そんな残酷な事実、理解したくなかった。
「────お前がZeusのトップか」
めったに聞くことのない侑真の殺気の籠った声に、びくりと肩が跳ね上がる。
過剰に反応すれば不審に思われるかもしれないと頭の中では分かっているのに、それでも体は言うことを聞いてくれない。
震えたままの手に、定まらない思考。
けれど視線はリョウを捉えたままで。
そんな矛盾だらけの私を、リョウはもう見ていなかった。