キミを奪いたい
「……悪い。怖がらせたよな」
思った通り、すぐに元に戻った侑真は優しい手つきで私の頭を撫でてくれた。
良かった。────そう思ったのと同時に胸が痛んだ。
だって、普段優しい侑真がリョウを目の前にしただけであんなに変わるなんて思ってなかったから。
それだけリョウに対して────ううん、Zeusに対して敵対意識があるということ。
私の前であんなにも敵対心をさらけ出したのは初めてだと思う。
「行こう」
「……うん」
これから卓さんのカフェに行って食事を楽しむ余裕なんて今の私にはなかった。
頭の中にはもう、リョウのことでいっぱいで。
それでも皆に心配かけられないから、平静を装ってそのまま歩みを進めた。