キミを奪いたい
手を握ったまま勢いよく立ち上がったリョウ。
私も続いて立ち上がり、一緒にお母さんの顔を覗き込む。
すると、それに気付いたのか、それとも偶然目を開けたのか分からないけれど、確かにお母さんの目が開いた。
「母さん!」
「お母さん……!」
その呼び掛けに応えるように少しだけこちらを向くお母さん。
今度こそお母さんの視線がリョウを捉えて。
「っ、」
それだけで涙が溢れて止まらなくなる。
神様に願いが通じた。お母さんに想いが通じた。
嬉しくて涙が止まらない。
「母さん、あやのを……あやのを連れてきた。会いたがってただろ」
「……っ、お母、さんっ、リョウと一緒にお母さんに会いに来ました。とても、とても会いたかったです」
───本当に、本当に会いたかった。
話したかった。
「……」
「……うん。分かってる。無理に喋らなくていいから」
お母さんの口元が僅かに動いた。
声は全部出ていないけれど、それが私の名前を呼んでいるのだとすぐに気付いて、リョウと一緒に何度も何度も頷いて笑顔を作る。