キミを奪いたい
「お母さんのおかげでリョウとまた一緒にいられることになりました。本当に……本当にありがとうございます」
こんな風にお母さんに会いに来られるのも、お母さんが後押ししてくれたおかげ。
本当に感謝してもし足りない。
「……っ……か……」
「……っ、ありがとう、ございます……っ」
“良かった”
お母さんの心の声が確かに届いて、ぽろぽろと涙がシーツに零れ落ちる。
「あやの」
俯いた私の肩にそっと触れてくるリョウ。
顔を上げれば、目が合ってすぐリョウの視線が落ちて。
それを追いかけて視線を落とせば、お母さんとリョウの手があった。
そっとリョウの手が緩んで、お母さんの手が私に差し出される。
手が震えた。
まるで壊れ物に触れるかのように、白くて細い手をそっと両手で包み込む。
「っ、」
冷たかった。
氷のように冷たくて。
自分の体温を分け与えようと、思わずぎゅっと強く握ってしまった。
「っ、ふ……っ……」
痛みを感じたかもしれないのに、お母さんはそれを受け入れてくれて、また涙が溢れてくる。