キミを奪いたい
「リョウ!ナースコール!」
その呼びかけにリョウは、すぐさま枕元に置いていたナースコールに手を伸ばした。
その間もお母さんの咳は止まらなくて、合間に漏れる呼吸が段々と荒くなっていく。
やだ、やだ……っ!
死なないで、お母さん……!!
「先生!!母は……!?」
「……手は、尽くしました」
「そんな……」
お母さん……!
今まで何度も何度も山場を乗り越えてきたお母さん。
私は頑張って持ち直して欲しいと願っているけれど、リョウは感じ取っているのかもしれない。
────お母さんの、最後を。
「……母さん、もう耐えなくてもいい。頑張らなくていいから……」
「リョウ……っ」
さっきと同じように、お母さんの手を取るリョウ。
その手は小刻みに震えていて、まるで縋るように手を額に寄せて俯いた。
噛み締められた唇からは、嗚咽も言葉も出てこなくて。
その代わりに一筋の涙が流れ落ち、何とか現実を受け入れようと耐えていた。
そんなリョウの姿を見たら、とてもじゃないけど涙を堪える事なんて出来なくて。
リョウの傍に腰を下ろし、膝立ちでリョウに寄り添う。