キミを奪いたい
「俺を、産んでくれてありがとう。
母さんの子供に、産まれて良かった……」
リョウ……
「愛してくれて、ありがとう……っ」
最後の言葉は、声が震えて聞き取りにくかったけど、それでもちゃんと伝わった。
ちゃんとお母さんに伝わったよ。
だって、ほら。
お母さんの目から涙が一筋、流れているもん。
リョウの言葉がちゃんと伝わった証拠だよ。
「お母さん……」
そっとリョウの服を握りしめて、お母さんの顔を覗き込む。
お母さんがこっちを見てくれることはなかったけど、きっと聞こえてる、そう思って口を開いた。
「私……リョウの事が大好きです。大切に、思ってます」
本当に。心から大好きだって思う。
そう思えたのは、お母さんのおかげだ。
お母さんが後押しをしてくれたから。
お母さんのおかげでこうしてリョウと一緒にいられる。
全部全部、お母さんのおかげ。