キミを奪いたい
「リョ、ウ……?」
その声が聞こえたのは、そろそろマンションの中へ入ろうかと思ったときだった。
────最初、幻聴かと思った。
逢いたいと切望し過ぎて、リョウの事を考え過ぎて、とうとう幻聴まで聞こえたのかと思った。
けど、違った。
「あやの」
その声は確かにリョウのものだった。
いつものような優しい声色じゃないけれど。
「あやの」
むしろ緩和と正反対な無機質な声色だけど。
「あやの」
それでも、私に向かって投げかけられたその声は、確かに私の大好きなリョウの声だった。