キミを奪いたい
「リョウ……」
顔を上げた先にいあたのは、思った通りリョウで。
どうしてここに───なんて疑問は、一瞬で掻き消されてしまった。
脳内を駆け巡るのは、緋月とZeusのことだけ。
隠していたことへの謝罪とか、もしかして責められるのかもとか。
様々なことが脳内に流れ込んできて、突然目の前に現れたリョウに動揺と困惑でいっぱいになった。
「っ」
自然と下がる目線。足が勝手に後退して、少しずつリョウから距離を取る。
だって、今の私にはリョウと目を合わせる度胸なんて備わっていないし、近づく勇気もない。
避けるくらいなら今すぐ立ち去ればいいのに────なんて思ったりもしたけど、それこそそんな度胸なんかなくて。
気まずいと思っているのに逢いに来てくれて嬉しいだなんて、本当に矛盾してる。