キミを奪いたい
「あやの」
「………」
「あやの」
「………」
「あやの」
「……っ」
何度呼びかけられても、なにも応えられない私。
だって、肯定してしまえばかろうじて繋がっていた私達の関係が途切れてしまうと思ったから。
だからうなづきたくないし、緋月の姫だってことも口にしたくない。
……けど、これ以上隠しておけないってことも頭ではわかっていたから。
だから────
「あや──」
「ごめんなさい」
「っ」
「……ごめんなさい、リョウ」
謝罪のみ口にした。
卑怯だってことはわかってる。
わかってる、……けど、どうしても“緋月の姫”だってことを口には出せなかった。