キミを奪いたい
「………」
「………」
手を伸ばせば触れられそうなほど至近距離での沈黙。
なにか言って欲しいけど、なにも言って欲しくない。
矛盾だらけの感情が胸中に渦巻いて、息をするのもままならない。
そんな私に、リョウがさらに追い打ちをかけてきた。
「お前は総長の女なのか?」
「っ、ちが……っ!」
────やっぱり、と思った。
あのときのあの視線。
絶対に誤解していると思った。
けど、誤解されても仕方ないと思う。
だって、緋月と一緒にいる女、イコール、緋月の姫ということだから。