キミを奪いたい
この世界ではそれが常識。姫は総長の彼女と認識されてしまう。
だから、リョウがそう勘違いしてしまうことは仕方ないこと。
だけど───
「彼女じゃ、ない……」
私は違う。緋月の姫だけど、侑真の彼女じゃない。
「────なら、俺……来い……」
「…………え?」
なんて言ったのかよく聞き取れなかった。
さっきよりも近い場所なのに─────吐息が触れそうなほどすぐ目の前にリョウがいるのに、私の耳には届かなくて。