キミを奪いたい
「────触んな」
「っ、」
「お前はもう俺の女じゃねぇ」
リョウは触れようとした私の手を乱暴に振り払い、こちらを一瞥することなく背を向け、歩き出した。
私はリョウの拒絶になんの言葉も出なくて。
去って行くその背中を、ただジッと見つめることしか出来なかった。
「ごめ……っ、ごめんなさいリョウ」
徐々に遠ざかっていくリョウの背中。
その背中を見つめながらその場にズルズルとうずくまって、何度も何度も謝罪の言葉を繰り返した。
「っ、ごめ……っ」
────こんな謝罪、ただの自己満足にすぎない。自分が楽になるためだけの謝罪の言葉。
謝ったところで許してなんてもらえない。
許して欲しいだなんて思っちゃいけない。
私は許されないことをした。
リョウにひどいことをしてしまった。
「ごめんなさいリョウ……」
────初恋というものを知って二週間。
私は初恋に別れを告げた。