キミを奪いたい
「あ、陽沙ちゃんだ!」
陽沙ちゃんのマンションは私の家から車で十分ほどの所にあって、駅と繁華街が徒歩圏内のいたって普通の五階建てマンション。
ワンルームで駅が近いせいなのか、住民の大半は大学生らしい。
そのマンションに週三のペースで入り浸っ……通っているお兄ちゃん。
そんなに一緒にいたいならもう同棲しちゃえばいいのにって思うけど、二人はまだ学生だからそんな簡単に同棲出来ないんだろう。
そういえば、誰かが言ってた気がする。程良い距離感が一番ラブラブでいられるって。
まぁ、お兄ちゃんの溺愛ぶりを見てると同棲したら苦労しそうだから、週三ぐらいがちょうど良いのかもしれない。
「あやのちゃん久しぶり!」
「陽沙ちゃん久しぶ……うっ、」
車に乗り込んできたとたん、ガバッと抱き着いてくる陽沙ちゃん。
気を利かせて後部座席に乗っているのに、陽沙ちゃんはいつも私が乗っている後部座席に乗り込んでくる。
ちなみに、陽沙ちゃんが抱き着いてくるのは毎度のことで。
「陽沙は学習能力ないよね」
お兄ちゃんの機嫌が悪くなるのも毎度のこと。