キミを奪いたい


基本、面倒臭いことが嫌いな陽沙ちゃん。

陽沙ちゃんいわく、最初、悪い輩とつるんでいるお兄ちゃんのことを毛嫌いしていたらしい。


大学生になったお兄ちゃんは、高校時代の金髪を封印して黒髪になってたから、さほど──というか、全然目立ってなかったんだけど、

たまたまお兄ちゃんが翠龍の元幹部たちと一緒にいるところを見てしまったらしく、その時、関わったらダメな人種だと再確認したらしい。


要領の良いお兄ちゃんが大学で翠龍の元幹部と一緒に居るなんて、と思ったけど、どうやら行きつけのBARで見られてしまったようで。

『素のお兄ちゃんに気づいたのがすごい!』と感心すれば、陽沙ちゃんからなぜかフッと謎の失笑が洩れた。


その失笑はそばにいたお兄ちゃんに向けられていたみたいで、お兄ちゃんは苦虫を噛み潰したような顔でボソッと呟いた。



『……つい呼んじゃったんだよ』

『えっ!?』



それを聞いた時は本当に驚いた。

だって、冷静沈着なお兄ちゃんがポロッと呼んじゃったなんて信じられなかったから。

まぁ、それだけ陽沙ちゃんと会ったことに驚いたってことなんだろうけど。

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