キミを奪いたい


「なに二人でコソコソしてんの?」

「な、なにもないよ?ね?陽沙ちゃん」

「うん、なにもない。ほら、さっさと行ってよ。お腹すいた」

「……陽沙、あとで覚えといてね」

「……っ」



お兄ちゃんの冷ややかな笑顔にグッと喉を鳴らした陽沙ちゃんだけど、そこはクールな陽沙ちゃん。

知らない、と一言吐き捨てて、ツンッとそっぽを向いてしまった。


お兄ちゃんはそれ以上なにも言うことはなかったけど、バックミラー越しに見た笑顔はそれはそれは真っ黒で。

こんな笑顔私といるときには見ないから、私がビビッてしまった。

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