嘘は輝(ひかり)への道しるべ
愛輝は、玄関の前に車を停めた。
愛輝は車から降りると、庭先から聞こえてくる泣き声に、玄関ではなく庭の方へと向かった。
祐介と美香の部屋の前には、佐々木が作ったウッドデッキが芝生へ降りられるよう建てられ、暖かな雰囲気を漂わせている。
心地よい風が吹き、ベビ―チェアの中から泣き声が聞こえた。
「ちょうど良かった。ミルク作ってくるから見ていてくれる?」
美香が愛輝の姿を見ると、慌ただしく部屋の中へと入って行った。
ばあやが、洗濯物のベビ―服やタオルの山を抱えて運んでいる。
「ひかり、もうすぐミルク出来るわよ」
愛輝は、ベビーチェアを揺らしながらひかりの顔を覗き込んだ。
「ひかり、どうした?」
祐介がウッドデッキに出てきた。
「兄さん、めずらしく早いわね」
「ああ、ここの所忙しくて、ひかりの寝顔しか見て無かったからな…… なあ、一週間見ないと、赤ん坊ってこんない可愛く成長するんだな?」
祐介の言葉に、愛輝は苦笑いした。
あんなにクールで堅実な祐介が、ここまで親バカになるとは想像も付かなかった。
祐介は、ひかりを抱き上げ、優しい瞳で包み込むようにあやす。
「お待たせ」
美香が持ってきたミルクを祐介が受け取り、慣れた手つきでひかりに飲ませ始めた。
愛輝は就職を期にこの家を出て自立する事を考えたが、それが本当に正しい事なのか迷った。
なんでも一人で暮らす事が自立となるわけでなく、この家で皆と助け合いながら、色々な事を乗り越えて行く事も、大切な事のような気がして、この家で真二を待つ事を決めた。
時々、一人の方が楽なのではと思うほど、慌ただしい日々に追われる事もあるが、こんな穏やかな時間に気持ちが安らぐのも事実だ……
「そう言えば…… 戻って来るらしいな?」
祐介が、ひかりから目を離さずに言った。
「えっ」
愛輝が驚いて祐介を見た。
「真二から連絡ないのか?」
「時々絵葉書送って来るけど…… 戻る事は書いて無かったわ」
「今時、絵葉書なんて送ってくるんだ、なんか意外。もう一年経つのね…… 」
美香がウッドデッキのベンチに、やれやれと腰をおろした。
「川島リョウで無く、バンドデビューするらしい。アメリカでも人気が出ているらしく、日本でも話題になっているぞ。ライブハウスから始めるらしいが、直ぐに伸し上がってくるさ。真二の曲なら間違いないだろう」
祐介は、ミルクを飲み終わったひかりを抱き直し、まるでひかりに話かけるように言った。
「兄さんがそう言ってくれるなら心強いわ」
「その件に関しては、美香の方が上だけどな」
「美香ちゃんが?」
愛輝は、気になり美香を見た。
「芸能界の感みたいな物が美香は鋭いんだよ。美香が売れると言った奴は必ず売れているよ。まあ、落ちて行く方も当たるけど……」
祐介が眉間に皺をよせ、小さなため息をついた。
「前にも言ったでしょ? 真二さん達は大丈夫よ! 皆の心を掴む光りを持っているから…」
美香が、自信に満ちた目で頷いた。
「美香ちゃん、そんな力を持っているの?」
「愛輝の付き人やって、色々な人見ているうちに感じるようになったのよ。大学卒業したら祐介さんの、片腕になるつもりよ!」
「凄い美香ちゃん、片腕どころか芸能事務所の社長にでもなりそうよ」
愛輝の言葉に、美香が笑った。
「きゃっきゃっ」
ひかりの笑い声が、いつもより機嫌よく響く……
「そうそう、川島リョウのバンド『NEXT LIGHT』って言うらしい……」
「次のヒカリ……」
愛輝が呟いた時だった。
門から続く道を、歩いて来る人影が見えた。
来客ならばあやが伝えてくれるはずだが……
確か、門の手入れを佐々木がやっていたが……
知り合いでも来たのだろうか?
愛輝は、何故か近づく人影が気になり、目を離せず真っ直ぐその姿を見つめた。
愛輝は車から降りると、庭先から聞こえてくる泣き声に、玄関ではなく庭の方へと向かった。
祐介と美香の部屋の前には、佐々木が作ったウッドデッキが芝生へ降りられるよう建てられ、暖かな雰囲気を漂わせている。
心地よい風が吹き、ベビ―チェアの中から泣き声が聞こえた。
「ちょうど良かった。ミルク作ってくるから見ていてくれる?」
美香が愛輝の姿を見ると、慌ただしく部屋の中へと入って行った。
ばあやが、洗濯物のベビ―服やタオルの山を抱えて運んでいる。
「ひかり、もうすぐミルク出来るわよ」
愛輝は、ベビーチェアを揺らしながらひかりの顔を覗き込んだ。
「ひかり、どうした?」
祐介がウッドデッキに出てきた。
「兄さん、めずらしく早いわね」
「ああ、ここの所忙しくて、ひかりの寝顔しか見て無かったからな…… なあ、一週間見ないと、赤ん坊ってこんない可愛く成長するんだな?」
祐介の言葉に、愛輝は苦笑いした。
あんなにクールで堅実な祐介が、ここまで親バカになるとは想像も付かなかった。
祐介は、ひかりを抱き上げ、優しい瞳で包み込むようにあやす。
「お待たせ」
美香が持ってきたミルクを祐介が受け取り、慣れた手つきでひかりに飲ませ始めた。
愛輝は就職を期にこの家を出て自立する事を考えたが、それが本当に正しい事なのか迷った。
なんでも一人で暮らす事が自立となるわけでなく、この家で皆と助け合いながら、色々な事を乗り越えて行く事も、大切な事のような気がして、この家で真二を待つ事を決めた。
時々、一人の方が楽なのではと思うほど、慌ただしい日々に追われる事もあるが、こんな穏やかな時間に気持ちが安らぐのも事実だ……
「そう言えば…… 戻って来るらしいな?」
祐介が、ひかりから目を離さずに言った。
「えっ」
愛輝が驚いて祐介を見た。
「真二から連絡ないのか?」
「時々絵葉書送って来るけど…… 戻る事は書いて無かったわ」
「今時、絵葉書なんて送ってくるんだ、なんか意外。もう一年経つのね…… 」
美香がウッドデッキのベンチに、やれやれと腰をおろした。
「川島リョウで無く、バンドデビューするらしい。アメリカでも人気が出ているらしく、日本でも話題になっているぞ。ライブハウスから始めるらしいが、直ぐに伸し上がってくるさ。真二の曲なら間違いないだろう」
祐介は、ミルクを飲み終わったひかりを抱き直し、まるでひかりに話かけるように言った。
「兄さんがそう言ってくれるなら心強いわ」
「その件に関しては、美香の方が上だけどな」
「美香ちゃんが?」
愛輝は、気になり美香を見た。
「芸能界の感みたいな物が美香は鋭いんだよ。美香が売れると言った奴は必ず売れているよ。まあ、落ちて行く方も当たるけど……」
祐介が眉間に皺をよせ、小さなため息をついた。
「前にも言ったでしょ? 真二さん達は大丈夫よ! 皆の心を掴む光りを持っているから…」
美香が、自信に満ちた目で頷いた。
「美香ちゃん、そんな力を持っているの?」
「愛輝の付き人やって、色々な人見ているうちに感じるようになったのよ。大学卒業したら祐介さんの、片腕になるつもりよ!」
「凄い美香ちゃん、片腕どころか芸能事務所の社長にでもなりそうよ」
愛輝の言葉に、美香が笑った。
「きゃっきゃっ」
ひかりの笑い声が、いつもより機嫌よく響く……
「そうそう、川島リョウのバンド『NEXT LIGHT』って言うらしい……」
「次のヒカリ……」
愛輝が呟いた時だった。
門から続く道を、歩いて来る人影が見えた。
来客ならばあやが伝えてくれるはずだが……
確か、門の手入れを佐々木がやっていたが……
知り合いでも来たのだろうか?
愛輝は、何故か近づく人影が気になり、目を離せず真っ直ぐその姿を見つめた。