嘘は輝（ひかり）への道しるべ

　夕べは、美香と遅くまでおしゃべりをしていので、カーテンの隙間から光りが差しても、愛輝はベッドから出られずにいた。

「愛輝いつまで寝ているのよ！　早く起きなさいよ！」

　美香の声が明るく部屋の中に響き、カーテンを勢いよく開けた。
　部屋の中には、一気に明るい陽射しが差し込んだ。


「美香ちゃん…　もう少し寝かせてよ」

　愛輝は美香の顔も見ずに、布団の中に顔を埋める。

「祐介さん、待っているんだから、早く朝食済ませよう！」

　美香は、愛輝の被る布団を捲り上げた。


「もう、何なのよ？」


　愛輝は眠い目をこすりベッドから起き上がると、美香に急かされ着替えもそこそで朝食を済ませた。


　愛輝は何故か又、祐介に昨日と同じようにメイクをされている。

　その横で見ている美香の視線が、何か企んでいるようで気になって仕方ない……


　祐介の手が止まり、メイク道具を鏡の前にカタッと音を立てて置いた。

「さあ、魔法がかかった。自信を持ってゆっくり目を開けてごらん」

　祐介の手が肩を優しく叩く。

　愛輝が目をゆっくりと開けた。

　鏡には、綺麗にメイクされた愛輝の姿が映った。

　何度見ても、自分とは思えない不思議な気分だ……


「昨日よりは、少しナチュラルなメイクだけど、この方が愛輝には似合っているよ」

　祐介が愛輝の姿を、もう一度確かめるように見た。


「うん……　でも、どうしてメイクなんか？」


　愛輝はなんだかよく分からず、小さな声でぶつぶつと独り言のようにつぶやいた。


　しかし、そんな愛輝の事葉は構わずに……


「愛輝行くよ」

　美香が親指を上げ、外を指した。

「何処へ行くのよ？」


「いいから、いいから」

　美香が部屋のドアを開け、文句を言わせないよう手招きをする。


　美香の勢いに仕方なく立ち上がると……


「ちょっと待って。これは美香ちゃんにあげるよ」

　祐介がソファーの上にあった紙袋を美香に差し出した。

　美香が袋を開けると、中にはカーキ色のシャツと黒のショートパンツが入っていた。


「仕事用に、いつも使っているブランドの店から買って来たんだけど、これは美香ちゃんに似合いそうだから」

　祐介がウインクして、美香に着替えてくるように指を指した。


「私に？　こういう服着てみたかったんだ。うれしい！」

　美香は勢いよく自分の泊まっている部屋に走った。


　着替えを済ませ戻って来た美香は、本当に良く似合っていて、ショーパンツから出た長い脚が美香を少し大人っぽく見せた。