嘘は輝(ひかり)への道しるべ
美香と愛輝は高校のグラウンドの前に立っていた。
グラウンドにはサッカー部員が勢いよく、ボールを追い掛けている。
「私はここで見ているから、愛輝行っておいで。拓海も絶対に気に入るよ」
美香は少し力強い笑みを見せた。
「えっ! でも、私…」
愛輝は、拓海の前にもう一度立つ事など出来るはずも無く下を向いた。
しかし、美香の口からは全て見抜いていたような言葉が力強く並べられた。
「このままでいいの? 傷ついたまま前に進めない愛輝なんて見たくない! 大丈夫、魔法がかかったんだから…… 凄く綺麗よ。自信持って!」
美香の言葉に、あれ程嫌だと思っていたのに、何故か足が前に進みだした。
不安が無くなったと言ったら嘘になる。
又、傷付くかもしれないと思うと怖い。
でも、美香の言葉に、前に進みたいという思いが、強く愛輝の背中を押した。
そして、魔法のかかった自分に、少しだけ自信を持つ事が出来そうだった。
愛輝はグランドのフェンス越しに拓海の応援をしている女子より、少し離れて立った。
女子の中には梨花子も居る。
隣で見ていた女子が、愛輝に気付き「誰?あの子」「凄く綺麗」と言う声が聞こえて来た。
サッカーの練習をしていた男子部員達も、チラチラと愛輝の事を見ている。
拓海もゴールを決めると愛輝の方へ視線を送る。
しかし、愛輝は拓海を見ても以前のように気持ちがときめかず、チームのプレーを冷静に見てしまっていた。
練習が休憩になると、拓海が愛輝の方へ近づいて来た。
周りで見ていた女子達のヒソヒソと話す声が聞こえる。
もっと、動揺すると思っていたのに、以外にも冷静な目で拓海を見られる事に愛輝も驚いていた。
「君、うちの学校の生徒じゃないよね。こんな可愛い子が居たら誰だって気が付くよな。俺、気賀沢拓海。もしかして俺の事応援に来てくれたの? 名前教えてくれない?」
拓海は愛輝だと言う事に気が付いていなかった。
愛輝はじっと拓海の目を見ると覚悟を決めて口を開いた。
「サッカーってチームプレーよね?」
愛輝の拓海への気持ちは、別の方向へと変わっているようだ。
「勿論、そうだけど…」
拓海が予想外の答えに戸惑いながら答える。
「サッカーってゴールに向かって皆が協力するスポーツだと思っていたけど、あなたのチームって、あなたにゴールさせる為だけに動いているのね? あなたより他に上手な選手居るんだから、他の選手がゴールしたらもっと強いチームになるのにね…」
愛輝は残念そうに部員達の方を向いた。そして、はっと我に返ったように、
「ごめんなさい。余計な事よね… それから私、あなたに興味があった訳じゃないの。ただ通りかかっただけよ」
愛輝はそう言うとニコリと拓海に笑顔を見せた。
愛輝の笑顔にサッカー部員から、「おっー」と歓声があがった。
相変わらず、女子生徒達はコソコソと何やら愛輝と拓海の事を話しているようだ。
呆然とする拓海を背に、愛輝は歩き出した。
遠くから見ていた美香に愛輝はVサインを送った。
「これで良かったの?」
美香が確認するように愛輝を見た。
「私、もう拓海君の事好きじゃないみたい。なんかスッキリした。ありがとう美香ちゃん」
拓海に言われた事の傷がすっきりと消えた訳では無いのは分かっていたが、ただ、ずるずる引きずり、メソメソする自分はもう居ない事を、愛輝は確かに感じていた。
「愛輝が納得できたならいいや。祐介さんが掛ける魔法は、外見だけじゃなく心にもかかるんだね。もう、バカな男に騙されちゃダメだよ!」
美香が、いたずらっぽい笑み愛輝に見せた。
「はーい」
愛輝が少し口を尖らせ返事をする。
「それじゃ、アイスでも食べて帰ろう! 愛輝のおごりね」
「えー」
愛輝が不服そうな声を上げる。
「今回はしっかり協力したからね」
美香はガッツポーズを愛輝に見せた。
愛輝と美香は夏の初めの気持ちの良い風に背中を押され、軽やかな足取りで駆け出して行った。
グラウンドにはサッカー部員が勢いよく、ボールを追い掛けている。
「私はここで見ているから、愛輝行っておいで。拓海も絶対に気に入るよ」
美香は少し力強い笑みを見せた。
「えっ! でも、私…」
愛輝は、拓海の前にもう一度立つ事など出来るはずも無く下を向いた。
しかし、美香の口からは全て見抜いていたような言葉が力強く並べられた。
「このままでいいの? 傷ついたまま前に進めない愛輝なんて見たくない! 大丈夫、魔法がかかったんだから…… 凄く綺麗よ。自信持って!」
美香の言葉に、あれ程嫌だと思っていたのに、何故か足が前に進みだした。
不安が無くなったと言ったら嘘になる。
又、傷付くかもしれないと思うと怖い。
でも、美香の言葉に、前に進みたいという思いが、強く愛輝の背中を押した。
そして、魔法のかかった自分に、少しだけ自信を持つ事が出来そうだった。
愛輝はグランドのフェンス越しに拓海の応援をしている女子より、少し離れて立った。
女子の中には梨花子も居る。
隣で見ていた女子が、愛輝に気付き「誰?あの子」「凄く綺麗」と言う声が聞こえて来た。
サッカーの練習をしていた男子部員達も、チラチラと愛輝の事を見ている。
拓海もゴールを決めると愛輝の方へ視線を送る。
しかし、愛輝は拓海を見ても以前のように気持ちがときめかず、チームのプレーを冷静に見てしまっていた。
練習が休憩になると、拓海が愛輝の方へ近づいて来た。
周りで見ていた女子達のヒソヒソと話す声が聞こえる。
もっと、動揺すると思っていたのに、以外にも冷静な目で拓海を見られる事に愛輝も驚いていた。
「君、うちの学校の生徒じゃないよね。こんな可愛い子が居たら誰だって気が付くよな。俺、気賀沢拓海。もしかして俺の事応援に来てくれたの? 名前教えてくれない?」
拓海は愛輝だと言う事に気が付いていなかった。
愛輝はじっと拓海の目を見ると覚悟を決めて口を開いた。
「サッカーってチームプレーよね?」
愛輝の拓海への気持ちは、別の方向へと変わっているようだ。
「勿論、そうだけど…」
拓海が予想外の答えに戸惑いながら答える。
「サッカーってゴールに向かって皆が協力するスポーツだと思っていたけど、あなたのチームって、あなたにゴールさせる為だけに動いているのね? あなたより他に上手な選手居るんだから、他の選手がゴールしたらもっと強いチームになるのにね…」
愛輝は残念そうに部員達の方を向いた。そして、はっと我に返ったように、
「ごめんなさい。余計な事よね… それから私、あなたに興味があった訳じゃないの。ただ通りかかっただけよ」
愛輝はそう言うとニコリと拓海に笑顔を見せた。
愛輝の笑顔にサッカー部員から、「おっー」と歓声があがった。
相変わらず、女子生徒達はコソコソと何やら愛輝と拓海の事を話しているようだ。
呆然とする拓海を背に、愛輝は歩き出した。
遠くから見ていた美香に愛輝はVサインを送った。
「これで良かったの?」
美香が確認するように愛輝を見た。
「私、もう拓海君の事好きじゃないみたい。なんかスッキリした。ありがとう美香ちゃん」
拓海に言われた事の傷がすっきりと消えた訳では無いのは分かっていたが、ただ、ずるずる引きずり、メソメソする自分はもう居ない事を、愛輝は確かに感じていた。
「愛輝が納得できたならいいや。祐介さんが掛ける魔法は、外見だけじゃなく心にもかかるんだね。もう、バカな男に騙されちゃダメだよ!」
美香が、いたずらっぽい笑み愛輝に見せた。
「はーい」
愛輝が少し口を尖らせ返事をする。
「それじゃ、アイスでも食べて帰ろう! 愛輝のおごりね」
「えー」
愛輝が不服そうな声を上げる。
「今回はしっかり協力したからね」
美香はガッツポーズを愛輝に見せた。
愛輝と美香は夏の初めの気持ちの良い風に背中を押され、軽やかな足取りで駆け出して行った。