嘘は輝(ひかり)への道しるべ
恋人への道しるべ
「おい! そのニマニマした顔なんとかならないの?」
美香が、我慢出来ずに怒りだし声を上げた。
「えっ、私そんな顔している?」
愛輝は、にまっ―としまりの無い顔を向けて言った。
事務所に向かう、祐介の運転する車の中で、愛輝と美香は後部座席に座っていた。
「だいたい、昨日は誰とディズニーランドに行ったのよ?」
美香が、おみやげのクッキーの缶を手にして言った。
「誰って。パパと同じ病院で入院している女の子よ。勉強教えてあげているのよ」
「二人で行ったのか?」
祐介がミラー越しに愛輝をチラリと見た。
「ううん…… のどかちゃんのお兄さんと三人よ」
と答えた愛輝の顔が、また、にまっーとなった。
「何がお兄さんだよ。正直に言え!」
伸びてきた美香の手が、愛輝の頬をつまんで引っ張った。
「痛いよ! やめてよ~ 美香ちゃん~ 正直に言ったのに~」
「愛輝! その兄さんの事好きなんじゃないの? ほら吐け――」
美香が、また、愛輝の頬を引っ張った。
「愛輝、まさかとは思うが、そいつにヒカリの話はしていないよな?」
祐介が、冷静な口調を投げてきた。
「勿論言ってないわよ。そんな関係じゃないってば……」
愛輝は、頬の痛みを手で摩った。
「友達が出来るのはいいが、くれぐれも気を付けろよ」
祐介の顔に笑みは無く、いつになく厳しい表情のままハンドルを握っていた。
その姿を、美香が後部座席から不安そうな目で見た。
「うん、分かっている……」
愛輝は車の窓から見えた、ショーウィンドーに飾られたヒカリのポスターを見ながら重く返事をした。