嘘は輝(ひかり)への道しるべ
「ヒカリと話をしている所を、あゆみに見らちまって…… 愛輝と別れないと、マスコミにバラすって言われたんだ…… あゆみのやつ本気だ。
俺も妹の手術が終わるまでは、リョウのイメージに影響を及ぼす訳には行かない……
とにかく今は、あゆみがデビューして気持ちが落ち着くのを待とうと……
そうしているうちに妹の手術も終わると思ったんだ……」
真二は、力無い表情でグラスを持つ手を見つめた。
「あれほどヒカリで居る時は気を付けろ、って言っておいたのに! 愛輝のせいじゃないか? 愛輝にちゃんと話せば良かったんじゃないのか?」
「話したら愛輝のやつ気にして、モデル辞めるって言い出すだろ。自分はどうなってもいいって…… そんな事をしたら、愛輝を守る為にヒカリとして正体を隠す事を決めた、愛輝のおやじさんの気持ちを潰す事になっちまう。 それに、妹の手術費用の事も責任感じるだろう?」
「まあな…… だが、お前が一人でなんとか出来る話でもないだろう?」
「……」
真二は黙って唇を噛みしめた。
「分かった。その、あゆみって子の事は、僕がなんとかする」
「なんとかって?」
「まあ、大丈夫だ。だけど…… お前が半端な気持ちで、愛輝に近づいたなら、ぶん殴っているところだったがなぁ……」
祐介がニヤリと真二を睨んだ。
「半端なんて… 俺だって、こんな気持ちになるなんて思っても居なかった。側にいて守ってやりたい…… それに、こんな風にみんなに愛されている奴と、軽い気持ちでなんて付き合えないだろ……」
真二は顔を上げ、祐介を睨むように見た。
「ああ…… みんな何処かで、嘘から愛輝を守ろうと思って必至だったんだろうな…… そのせいで、愛輝を大事にし過ぎて、友達作りの下手な、臆病な子にしてしまったのかもしれない……」
祐介が、ふと何かを思い出したように言った。
「みんなに愛されている事を感じているから、強くも優しくもなれるじゃないのかな? だから、あんなに綺麗でまっすぐな瞳なのかもしれない……」
真二が、愛おしいものを思い出したような優しい目をした。
「そうかもなぁ…… 俺もお前を信じる事にするかな」
「俺もって?」
真二が祐介に問い詰めるように聞いたが……
「さあな…… だが、リョウとお前の噂がゴシップ記者にも流れているらしいぞ。事務所にも話しておいたた方がいい……」
祐介の目が険しく変わった。。
「ああ… 分かった」
「それと…… リョウの悪い噂も耳にして気になっているんだが…」
祐介の言葉が濁った……
「悪い噂って?」
真二が聞き返すと、祐介は眉間に皺を寄せて渋い顔をした。