嘘は輝(ひかり)への道しるべ
大切なものへの道しるべ
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 輝はあの撮影以来、真二に連絡をしていなかた。
 真二から連絡が来るのを、信じて待つ事に決めたからだ。

 CMや雑誌の仕事に大学の講義と、愛輝は忙しい日々に追われていた。


 川島リョウの全国ツアーチケット完売のお知らせと、ネットのサイトで見ていた時だった。
 のどかからのメールがスマホの画面に写った。

 手術の日が決まった事と、手術の前に愛輝に会いたいと綴ってあった。
 いつの間にか、のどかの手術の時期になっていたのだ。

 スケジュール帳を確認し、手術前日なら大学の講義の後行けそうだ。
 真二もツアー中で病院には来ないと思った。



 愛輝は講義が終わると病院へ向かう為、急いで大学の門を出た。


「愛輝?」
 
 と聞き覚えのない男性の声に愛輝は振り向いた。


 そこには、少し照れくさそうに笑う拓海が立っていた。
 愛輝は辺りを見回したが、拓海は一人のようだ。


「久しぶり」

 拓海は罰が悪そうに声を掛けて来た。


「久しぶり……」

 愛輝もたどたどしく挨拶を返した。
 別に今は何んとも思っていないのだが、言葉がスムーズに出ない……


「ちょっと時間ある?」


「私、これから行く所があって」


「そんなに時間取らせないから…」

 拓海が、縋るような目で愛輝を見た。


「分かったわ。十五分位なら」


「うん、十分だ」

 拓海の顔が、ほっとしたように緩んだ。


 愛輝と拓海は近くのカフェに入った。
 
 ついこの間までアイスコーヒが美味しく感じたのに、今日は暖かい飲み物が恋しい。
 愛輝はほっとミルクティーを注文した。

 拓海はホットコーヒーを注文すると愛輝に目を向けた。


「俺、ずっと愛輝に謝ろうと思っていて……」


「謝るって何を?」

 愛輝は、拓海が何を言っているのか分からず首を傾げた。


「愛輝が俺にマスコットのお守りくれた時のこと……」


「もう、私そんな事覚えてないわよ。私こそ恥ずかしいわ」

 愛輝は、ため息まじりに笑った。


 しかし、拓海の真剣な表情は変わらない。


「俺はずっと忘れられなくて。本当に済まなかった。愛輝の気持ち傷つけちゃって……」

 拓海の真剣な顔に、愛輝は何かを思い出したように口を開いた。



「もういいわよ。あの時のお蔭で、私に転機が来たのかもしれないんだから……」


「えっ?」

 拓海が驚いた顔で愛輝を見た。


「ごめん、ごめんこっちの話よ」


 愛輝が気にしていないと言っても、拓海はゆっくりと話を続けた。


「あの頃さ、自分が一番になる事ばかりしか頭になくて、周りの奴の事なんて考えた事無かった。梨花子と誰かしらからかって面白がって、自分は最高だって勘違いしていた。最低だよな……」


「でも…… 拓海くんはかっこよかったわよ。サッカー部のエースだったじゃない」


「俺なんかエースじゃなかったんだよ。あの頃、モデルのヒカリに似た女の子が練習を見に来た事があってさ…… てっきり俺を見に来たと思って声かけちまったんだ。そしたらその子に、言われちゃってさ…… 俺より上手い子い沢山居るって。
 それに、俺にゴールさせる為のチームだって言われて、ショックだった…… そんなんでチームが強くなる訳ないよな…… 
 その時のヒカリに似た子、愛輝じゃないよな? 愛輝に目がよく似ていたんだけど……」

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