嘘は輝(ひかり)への道しるべ
ヒカリは撮影が終わると、事務所の社長室へと向かった。
「決めたようね?」
杏子は社長の椅子に座り、落ち着いた表情で愛輝を見た。
「はい!」
愛輝は、はっきりとした言葉と共に、真っ直ぐな目で杏子を見た。
「それで?」
「すみません…… 引退したいと思います」
「そう…… 残念ね…… あなたのような子は、なかなか居ないのよ…… まだまだ、可能性は沢山あると思っていたんだけどね……」
杏子はふっとため息をもらした。
「申し訳ありません。私には、この世界で生きて行く力が無いと思います。私がここまで来られたのは、運が良かったのと、周りの方々の力のお蔭だと思っています」
「本当に、あなたは欲が無いのね…… あなたぐらいの歳の女の子なら、羨むような事なのに……」
杏子は、小さく息を着くと机の引き出しから束になった封筒を出し、愛輝の前に差し出した。
「これは?」
愛輝は、不思議そうな顔で封筒を受け取った。
「読んで見なさい」
愛輝は、封筒の中から便箋を取り出した。
『ヒカリへ…… はじめまして。川島リョウのミュージックビデオのヒカリが凄く綺麗でした。ヒカリの真っ直ぐな目に、勇気が出ました。明日、好きな人に告白しようと思います。振られちゃうかもしれないけれど、気持ちをぶつけてみようと思います。
ヒカリへ…… 私は、友達と上手く行かなくて、しばらく学校休んでいます。でも、今日、ヒカリと同じ髪型してみました。なんか、勇気出てきて、明日友達に謝ろうと思います。
ヒカリへ…… 私はヒカリが大好き! 綺麗で真っ直ぐな目に、絶対素敵な人だと思う。だから、もっともっとヒカリを教えて欲しい。もっともっと人間らしいところ見せて欲しい』
封筒の束は、全てヒカリへの熱い思いが綴られた物だった。
愛輝の目から涙が落ちた。
「今時珍しいんだけどね、手紙を送ってくる子ってね…… 勿論、SNSの反響も沢山あるんだけど、手紙で送ってくる子達って、本当に愛輝に勇気をもらったんじゃないのかって思うの……
あなたは気付いていないかもしれないけど、多くの人が、あなたから勇気や力をもらったと思うのよ…… それでも、本当に未練はない?」
杏子は、もう一度確認するように、愛輝の目をじっと見た。
愛輝は、ぎゅっと封筒を抱きしめた。
熱い思いが溢れ出てくる。
まさか、自分がこんなに誰かに大きな力を与えているなんて思ってもいなかった。
だからこそ、これ以上半端な気持ちで、皆の前に出てはいけないと思う。
「はい! ご迷惑おかけして申し訳ありません」
愛輝は、杏子に深々と頭を下げた。
もう、迷いは無かった……
杏子の深いため息が漏れたが、その表情は穏やかだった。
「決めたようね?」
杏子は社長の椅子に座り、落ち着いた表情で愛輝を見た。
「はい!」
愛輝は、はっきりとした言葉と共に、真っ直ぐな目で杏子を見た。
「それで?」
「すみません…… 引退したいと思います」
「そう…… 残念ね…… あなたのような子は、なかなか居ないのよ…… まだまだ、可能性は沢山あると思っていたんだけどね……」
杏子はふっとため息をもらした。
「申し訳ありません。私には、この世界で生きて行く力が無いと思います。私がここまで来られたのは、運が良かったのと、周りの方々の力のお蔭だと思っています」
「本当に、あなたは欲が無いのね…… あなたぐらいの歳の女の子なら、羨むような事なのに……」
杏子は、小さく息を着くと机の引き出しから束になった封筒を出し、愛輝の前に差し出した。
「これは?」
愛輝は、不思議そうな顔で封筒を受け取った。
「読んで見なさい」
愛輝は、封筒の中から便箋を取り出した。
『ヒカリへ…… はじめまして。川島リョウのミュージックビデオのヒカリが凄く綺麗でした。ヒカリの真っ直ぐな目に、勇気が出ました。明日、好きな人に告白しようと思います。振られちゃうかもしれないけれど、気持ちをぶつけてみようと思います。
ヒカリへ…… 私は、友達と上手く行かなくて、しばらく学校休んでいます。でも、今日、ヒカリと同じ髪型してみました。なんか、勇気出てきて、明日友達に謝ろうと思います。
ヒカリへ…… 私はヒカリが大好き! 綺麗で真っ直ぐな目に、絶対素敵な人だと思う。だから、もっともっとヒカリを教えて欲しい。もっともっと人間らしいところ見せて欲しい』
封筒の束は、全てヒカリへの熱い思いが綴られた物だった。
愛輝の目から涙が落ちた。
「今時珍しいんだけどね、手紙を送ってくる子ってね…… 勿論、SNSの反響も沢山あるんだけど、手紙で送ってくる子達って、本当に愛輝に勇気をもらったんじゃないのかって思うの……
あなたは気付いていないかもしれないけど、多くの人が、あなたから勇気や力をもらったと思うのよ…… それでも、本当に未練はない?」
杏子は、もう一度確認するように、愛輝の目をじっと見た。
愛輝は、ぎゅっと封筒を抱きしめた。
熱い思いが溢れ出てくる。
まさか、自分がこんなに誰かに大きな力を与えているなんて思ってもいなかった。
だからこそ、これ以上半端な気持ちで、皆の前に出てはいけないと思う。
「はい! ご迷惑おかけして申し訳ありません」
愛輝は、杏子に深々と頭を下げた。
もう、迷いは無かった……
杏子の深いため息が漏れたが、その表情は穏やかだった。