嘘は輝（ひかり）への道しるべ

　連日、リョウの話題が世間を賑わしている。
　祐介からの話だと、バンドのメンバーは一切関係の無いとの事だ。
　リョウも覚醒剤使用の事実は無いらしい。


　これからリョウの謝罪会見が報道番組で流さされる。

　愛輝は胸が張り裂ける思いで、テレビの前のソファーに美香と座った。


　記者達が集まる前に、紺のスーツに身を包んだ川島リョウが現れた。

　深々と頭を下げた姿は、少しやつれたように見える。

　リョウは重い口をゆっくりと開いた。


「この度は、皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしました事を、深くお詫びいたします。全て、私の軽率な行動が引き起こした事です」

　リョウはもう一度深く頭を下げた。


「リョウさんが覚醒剤を使用して居なかった事は警察も確認したようですが、何故、あの覚醒剤売買をしていた記者にお金を渡していたのですか？」

　記者が空かさず質問した。

　リョウはぐっと唇を噛みしめ、覚悟を決めたように口を開いた。


「皆様に、もう一つお詫びしなければならない事があります。実は私がデビューしてヒットした曲すべて、私でなく別の人間が作った物です」

　会場が大きくざわつき、記者達が一斉にマイクを向けた。


　「その事を、ある記者に知られてしまい、口止め料としてお金を払っていました。すべて私が勝手に判断した事です。今まで作詞作曲川島リョウと偽り、皆様にお聞かせしていた事を深くお詫びいたします。」


　リョウが深々と頭をさげると同時に、一斉にカメラのフラッシュが光った。


「それでは、誰が今まで曲を作っていたのですか？」

　記者の質問が上がる。


「私のバックギタリストである、木崎真二がリリースされた全ての曲を作っていました。彼にも、非情に申し訳なく思っています」

　リョウが震える唇を噛みしめた。


「この間のツアーの最終日に歌ったギタリストですよね。かなりの反響で、デビューの噂もありますが、今後の川島リョウさんの曲はどうなるんですか？」



「ファンを騙していた事について、今どう思われていますか？」

　続けざまに記者から質問があがる。


「……」

　記者の質問にリョウは言葉を失い、口を閉ざした。



　そこへ、リョウのマネージャーが現れマイクの前にすっと立っち、深々と頭を下げた。


「皆様をお騒がせいたしました事、事務所からも深くお詫びいたします。

　木崎よりコメントを預かっております。私がこの場をお借りし、木崎に代わり読ませて頂きます」