嘘は輝(ひかり)への道しるべ
 愛輝は空港の前でタクシーから降りると、人波をかき分け出発便を確認した。
 
 出発ロビーの行きかう人々の中を、真二を探し必至で走り回った。


 出国手続きの列に、ギターを肩にかけた真二の姿を見つけた。



「真二くん!」

 愛輝は、溢れる思いを押さえられず、大きな声で叫んだ。


 真二が振り向き、愛輝を見た。


 愛輝が、そのまま真二の元へ走り出した。


 真二も愛輝の元へと走り出した。


 愛輝が手を差出すと同時に、真二の手が愛輝の腕を掴み、そのまま胸に引き寄せ力一杯抱きしめた。


「ごめん… 愛輝」


「真二くん、私待っているから! 真二くんが帰ってくるまで…」


「愛輝… いいのか?」

 真二の熱い目が、愛輝の視線と重なった。


「今まで不安で… それでも待っていたのよ。絶対帰って来るって解っているんだから一年くらい平気よ! それに真二くんを待っていられるだけで幸せなの……」


「愛輝… 必ず帰ってくるから… いつだって愛輝の事想っているから…」


「うん! 私も…」


 愛輝が涙で潤んだ瞳を、真っ直ぐに真二へ向けた。


 その瞳が、言葉で伝えきれない今までの想いを全て語っているようだ。



「愛してる…」

 真二はもう一度、愛輝を強く抱きしめた。


「愛輝、本当に色々ごめん…… 辛い思いさせて……」


「ううん。全部、私のせだよね…… ごめんなさい……」


 愛輝は、涙で声を詰まらせて、やっとの思いで口にした。


「いや、俺に力が無かったからだ…… 今度はちゃんと愛輝を側で守れるくらい強くなって戻ってくるから……」



「うん! 待っている……」


「愛輝が決めた事、俺は誰よりも応援しているから。一年後、自分の道を、この真っ直ぐな目で歩いている愛輝に会えるように頑張るから……」


「うん。私も頑張る」


 目に涙をいっぱい溜めて笑顔を見せた愛輝に、真二が目を細めた。


「俺の事だけ考えていろよ…… 他の奴なんかに目を向けるなよ……」

 真二は少し恥ずかしそうに、視線を逸らした。


「うん…… 真二くんもだからね!」

 愛輝が意味あり気に真二を見ると、軽く頬にキスをした。


「ああ……」

 真二の顔が少し強張り、愛輝を優しく抱き寄せた。



「それと…… 悪いが、時々のどかの所へ顔を出してやってくれないか?」


「勿論、そのつもりよ」


「ありがとう」


 真二の目が優しく愛輝を見た。



 まだまだ、話したい事は沢山ある…… 

 聞きたい事だって沢山……

 だけど……
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