嘘は輝(ひかり)への道しるべ
のどかを家まで送ると、一人の優しそうな制服を着た青年が立っていた。


「あっ。颯太くん」

 のどかが車から飛び降りた。


「のどかちゃん、気を付けて!」

 愛輝が思わず声をあげると、颯太という青年は、慌ててのどかに手を差し出した。


「ごめんなさい愛輝さん。颯太くんよ」

 のどかが、申し訳なさそうに頭を下げると、颯太が曖輝の方へ目を向けた。


「はじめまして颯太です」

 きちんと挨拶の出来る、好印象の青年だった。


「愛輝です。のどかちゃんにこんな素敵なボーイフレンドがいるなんて知らなかったわ」


 のどかは頬を赤くして下を向いたが、慌てて愛輝へ顔を向けた。


「ねえ、お兄ちゃんには黙っていて…… お願い……」

 のどかは手を合わせて愛輝を見た。


「ええ―。どうしようかな?」

 愛輝は、少しいたずらな笑みを見せた。


「もう! お兄ちゃんと愛輝さんみたいに、人騒がせな恋愛はしませんから!」

 のどかが頬を膨らませた。


「どうも、お騒がせしました」

 愛輝の言葉に、のどかが笑いだし、つられて愛輝も颯太も笑った。


 のどかの幸せそうな笑顔に、一歩一歩確実に前へ進んでいる事を実感し、胸が熱くなった。
< 99 / 101 >

この作品をシェア

pagetop