いつの日か、あなたを。
「………えっと、は、はじめまして…っ」
数秒か目があって、慌ててその人は話し出した。
もしかしてこの居酒屋の子かな。身長は170センチ越えてるくらい?私より少し目線が高い。
栗色の柔らかそうな髪から、どこか柴犬みたいなくりくりした目が見えた。
「はじめまして、ここの居酒屋の子かな?」
「はいっ、そうです!ここの、居酒屋の店主の息子で、萩原太一(はぎわら たいち)って言います!」
元気いっぱいのその雰囲気は、なんだか、さっきまでの私の疲れも飛ばしてくれるような、そんな気がした。
何歳だろう。高校生に見えたけど、それにしては受け答えもちゃんとしてるし、童顔なのかもしれない。
「私は須藤柚希。今日から、ここの二階に住むことになったんだ。よろしくね」
「はいっ!よろしくお願いしますっ。…あ、もしかしてその荷物って」
「うん、これから持っていくとこ。二階だから、大丈夫だよ」
「て、手伝います!店も、もう終わりなので。ああでも、女性の荷物を男が運ぶのってだめですかね!?」
そのあたふたしてる萩原くんが、本当に柴犬みたいで、
「…ふふっ」
「な、何かおかしかったですか?」
「なんだか、犬っぽいね、萩原くんて」
「い、いいい犬ですか!?初めて言われました!」
お互いに少し緊張はあるけど、仲良くなれそう。親切な人だな。
初めて会ったばかりなのに、
なぜか、ずっと前からあなたを知っていたような、そんな気がした。