実は人じゃないんです
「まさか二人同時にだなんて・・・」
「でも駆け落ちしたんですって?子供の引き取り手がいないらしくてもめてるらしいわよ?」
「いい奥さんだったけどねぇ」
ざわざわざわ
9歳ともなれば大人が噂ばなしすることの意味だって分かる
簡単に泣かせてなんかくれない
「葵。大丈夫だよ」
そういって俺の右手を握ってくれた温かい手
両親の葬式の日。
きっと姉ちゃんだって辛かったはずなのに
姉ちゃんは泣かなかった
「葵くんは私たちの家においで」
「お姉ちゃんは私のとこだよ」
引き取り手が決まったのか
不自然な赤い爪と唇の女の人に肩をふれられる
姉ちゃんと俺は別の家に行くのだと知った
「はい」
姉ちゃんはゆっくりと俺から手をほどく
「あ・・・」
これだけははっきりしていた
「いやだ」
「え・・・?」