実は人じゃないんです
「姉ちゃん・・・?」
個室の扉を開け
病室特有のすっとしたにおいをかぎながら声をかけた
もちろん返って来るわけもない
ピッピッピッピッピッピ
電子音が耳に触る
いつか高く鳴り響く時が来るかもしれないのが怖い
「戻ってきてよ・・・」
姉ちゃんの手を握ってそっとつぶやいた言葉が、届いていればいいのに。
温かいのに、握り返してくれない手。
*・。*・。*・。*・。*・。:・。*・。
それから毎日、俺は病院に通った
春休みで時間もあったから、朝から面会終了時間までいた
ただただ
手を握るだけだったけれど。
「姉ちゃん」
「姉ちゃん・・・」
「姉・・・ちゃん」
毎日
まいにち
マイニチ
それでも
姉ちゃんは目を覚ましてはくれなかった
病院を出たら、俺は朝が来るまで歩き回った
行くあてはない
ただ、足が向いたところに行くだけ
足が疲れたら、適当に休んで
太陽が昇ったら
来た道を同じように歩く
何も考えたくなかった
何も
なにも
ナニモカモ
ゼンブ キエテ シマエバ イイノニ
「・・・アオイ・・・?」