実は人じゃないんです
「ヒナタ」

「ん?」

俺は急に名前を呼びヒナタの頬にあるものをくっつけた

「っつめた!」

「ははっひっかかってやんのー」

今日は土曜日
学校は休みだ
来週から夏休みが始まろうとしている7月

蝉の声が出てきだして汗が時たまポタリと落ちる

「なに、それー?!」


「ラムネ」

「ラムネ?」

そう、と頷きまたしてもヒナタの頬にキンキンに冷えたラムネをくっつけた

「っつっめた!!」

「暑いし、のど渇くだろー?」

はははっと笑いながら2本のうち1本をヒナタの手に乗せる

「飲み物、だよね?」

じーっと俺が買ったラムネを見ながらヒナタはつぶやいた

「飲んだことねーの?」

「ない」

へーとラムネの栓を瓶の口にセットしてビー玉を落とした

「めずらしーーーーくもないか。今の時代駄菓子屋すくねーもんな」

「そうなの?」

「そうだろ」

ビー玉で瓶の口がふさがらないように一口飲む

「あ。開け方わかんないよな。飲んだことなかったら」

「開けてくれる?」

「ん」

もうすでに飲んでいたラムネをヒナタに渡し、代わりにヒナタからまだ開けていない瓶を受け取る

「こーやって、栓を瓶の口にさしてコンッて叩くと」

言いながらヒナタに見せつつ動く

「ここにはまってるビー玉が落ちて、飲めるようになるっていうこと」

「へー!」

まじまじとラムネを見ながらヒナタは感嘆の声を上げた


「飲むときはビー玉が当たって止まらなように飲むんだ」



さっそく飲んでみようとヒナタは瓶を両手に持つ。

やわらかい唇にラムネの瓶がそっと触れる。

そして瓶を傾けたとき
一筋の光が、汗が、首筋を伝った

ヒナタの開けたばかりのラムネをもって口に運ぶしぐさが何とも言えない色気があってゴクリと唾をのむ

「んっ」

「・・・」

半目の瞳と暑さで赤い顔が俺に我慢するなと言っているみたいだ

「・・・ねえ。」

声をかけられてはっと現実に引き戻される


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