実は人じゃないんです
俺は差し出された手をつかむ

が、それは叶わなかった

手は空を切った

「っ…透け、てる」

ヒナタは柔らかそうなピンク色の唇が寂しそうに弧を描く
笑っているのにどこか寂しそうで崩れ落ちそうな


「お別れ、なんていわないよな」


幽霊でも…

「私が言うことわかってるじゃん。
ここでお別れだよ、アオイとはもう会えない」

























ヒナタはそれだけ言って俺に背を向けた
少し肌寒い季節には似合わない薄いワンピース
それがいつものように円を描く
だけどヒナタはもう

振り返らなかった

まっすぐに歩いて

俺の方を二度と見なかった
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