最初で最後の恋だから。ーセンセイー
「哲君~。」

ギギッと鳴った後いつものように開いたドアあの向こうから彼を呼ぶ女子がいた。

「紗智。」

私はパッと手を離した。

「哲君、約束の時間になっても昇降口に来ないんだもん。
30分以上待ったよ!」

怒り口調も可愛らしいその子に見覚えがあった。

「紗智。
今日は一緒に帰れないから・・・。」

「あれぇ?
ゆずちゃんじゃない??」

彼女は隣のクラスの以前私を人違いで抱きしめた子だ。

(ゆずちゃん・・・)

あの件以来、彼女は私を見かける度に手を振ったり話しかけてくる。

無視する訳にもいかず返事をしている内に彼女からちゃん付けで呼ばれるようなってしまった。

「ねーっ。
なんで哲君と一緒にいるの??」

彼女はくりくりの目を大きくして尋ねてくる。

(もしかして、私の彼に手を出すなってやつじゃ・・・。)

「ご、ごめんなさい。
でも、誤解だからっ。
私と古賀君は図書委員で・・・。」

「わ、私帰るね。」

パタパタと鞄を持ってその場から私は逃げ出した。

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