最初で最後の恋だから。ーセンセイー
「ごめんなさい。」

「・・・もう遅いから帰れ。」

「はい。」

腕時計を見ると7時をとっくに過ぎていた。

私がドアに手を掛けると先生がこちらを見ている。

「少し待て、すぐ終わるから。」

持っていた本を本棚に返すと側に来て私から鍵を取った。

「門まで送る。」

「いいです。」

「知らないのか?
家庭科棟には幽霊がでるんだぞ。」

言葉と同時に風が窓に当たる音がして私は思わず先生の白いシャツの袖を掴んだ。

「ご、ごめんなさい。」

「構わない、その方がいい。
感情をちゃんと出せるのは若いうちの特権なんだから。」

そう言うと先生はまた笑った。

その後は何も言わずに門まで送ってくれた。
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